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9.「厚突」とウレタン含浸塗装

 日本では無垢材の家具が高級品だという固定観念があるようです。接客していても突き板の使用はチープだとおっしゃる方がよくいらっしゃいます。しかし、本当にそうでしょうか?
 たしかに今の時代無垢材を使うのは贅沢の極みでしょう。LOHASという言葉がもてはやされていますが、これだけ人口が増えると無垢材の使用はサステイナブルな材料使用法とは言えません。とはいえ、私はエコの観点から無垢材使用を控えようと言う気は全くありません。突き板もいいものだと言いたいだけなのです。
 ABでも初期の段階では一部無垢材を使用していました。これを2005年の新作からは厚突きの突き板張りに仕様を変更しています。これは仕様を落としたわけではなく、ディテールを研ぎすますためでした。日本の通常の家庭内の環境は無垢材にとっては非常に厳しく、空調のオンオフで一日の温度、湿度の差が極端なことがままあります。無垢材はこのような環境の変化に応じ、収縮や反りをおこします。木材を使うかぎり避けられないことなのですが、より長期的に近藤さんの意匠のディテールを保つために仕様の変更は必要な事でした。
 厚突きの突き板というのは、欧米ではスタンダードなのですが、日本では薄突き(0.2mmt)が一般に流通している材料で、その約3倍の厚みの0.5-0.6mmにスライスされた材料のことです。厚突きの突き板は薄突きに比べ、塗装した際に無垢に近い深みがでます。ただ、厚い分無垢材と同様収縮や反りをおこすリスクもあります。
 ここで大事なのが下地処理で、ウレタン含浸塗装といって木の導管の中にウレタンが入り中で硬化する塗料で下地処理することで動き、狂いを防止します。またフラッシュ構造の木口面の芯材にはランバーを用いず、積層合板を用いる事で、木口面の木やせによる狂いを防ぎます。芯材にパーチクルボードなどを用いるメーカーも海外では一流どころでも意外に多いのですが、天板に傷がついて水が侵襲すると膨らんで突き板のハギ目がもりあがってしまうので、軽量化を考えても芯材にはペーパーハニカムが最適でしょう。こういった仕様であれば、無垢材にひけをとらない美しく長持ちする家具を作ることができます。
 このようにABの家具のようなミニマルな構成の家具ほど、素材や仕上げに気を配らなければなりません。見えがかり上、ミニマルっぽいものは割と安価に作れますが、ディテールが甘いとひどく安っぽくなってしまいます。突き板の吟味、仕上げへのこだわり、面取りや目地底の仕上げまで気を配らなければ、よくあるイタリアモダンのコピー品と同じになってしまいます。
 近年よく中国メーカーによる知的所有権の侵害への非難を耳にしますが、こと家具においては日本人による安易なコピーのほうが目立つように思います。今だにB&Bの完コピやってみたり、モラルのレベルは他国を批判するほど高くはないですね。ある大手家具販売店では国産OEMで月200台を超えると少し意匠を変えて中国生産に切り替えるそうです。そのため納入する家具工場側はあまり売れすぎないように工夫をこらすんだそうで、そんなことやってるうちに国内家具工場はどんどん倒産していくわけです。大手の家具店こそ国内家具メーカーと共に成長を目指すべきだと思うんですけどね。

written by yutaka
 

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