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5. デフレ、あるいは僕たちの失敗

 市場の評価はあまり芳しいものではありませんでした。価格が高いというのが大方のご意見でした。これには少し参りました。実は結構、近藤さんにクオリティを我慢してもらって安く作っていたつもりだったからです。「つもり」ではダメなわけです。原価を下げて安い家具を製作するのも、多分可能だったでしょう。製作しやすいコストがかからないようなデザインにしてくださいと近藤さんにお願いすることもできたでしょう。ただ、そんなことをするためにデザイナー主導型の家具ブランドを作ったわけではありません。
 2000年代の前半というのは、インテリア業界は転換期に入っていた時期です。バブルの崩壊で淘汰された家具工場がさらに中国へのシフトで調整を余儀なくされ、目に見える形でデフレが進行していた頃です。家具の単価水準は下がる一方で、あのカッシーナでさえ、東南アジアでのEbEwという安価な家具ブランドの生産をはじめた頃でした。安価な量産家具を作って売るのは大資本をもったメーカーならできたかもしれませんが、「AB design」がやれることでもやるべきことでもありませんでした。
 そこで近藤さんと相談して決めたのは「値段を少し上げて、品質を倍に上げること」でした。近藤さんの座右の銘は「分析と研究」です。家具ブランドを作る際も、色々な方に相談されて情報を収集していました。その頃はまだご存命だったカッシーナの前社長の武藤さんと近藤さんはビジネス上のつながりを超えて友人関係にあり、お互い遠慮しあいながらも助言を頂くこともあったようで、そのひとつが、「近藤君さあ、cassinaやarflexが出来ない事やらなきゃ駄目だよ。」だったそうです。「AB design」は2005年冬の新作から、高品質で孤高の「特殊家具屋」へと転換していくことになります。

written by yutaka

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                ⓒ 下村写真事務所
超高級家具材料ペアウッドを使った新作のアームチェアとテーブル

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