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FEEDS

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2006.09 Archive

2006.09.13

1. AB design の誕生

 インテリアデザイナーはオリジナルの家具を製作する機会が多いものです。良い悪いは別にして、プロダクトデザインを志望し、家具職人として腕を磨き、家具デザインの巨匠に師事して、いつかはデザインをという人よりも格段にその機会は多いのです。リビングデザイナーの小泉誠さんは家具が好きだからインテリアデザインを志向したとおっしゃっているぐらいです。
 そういうわけで、近藤さんは(このBlog中では「近藤康夫」のことを「近藤さん」と書きます。身内だから「近藤」と書くべきなんでしょうが、「近藤さん」という感じなので)長いキャリアの中で無数の家具をデザインしてきました。勿論インテリアデザイナーとしてのアプローチですが、ストックは豊富にあったわけです。もっともAB designの家具はブランド立ち上げにあたり、全て書き下ろしたものなのですが。
 近藤さんはもともと、家具をデザインして販売したいと考えてはいたそうですが、資金も必要な話ですからなかなか実現は難しいと思っていたようです。そこに私募債を募って家具の会社を作ろうと持ちかけたのが、ABの現在の代表の山野さんだったわけで、そこからはあっと言う間でした。山野さんという人は柔らかい関西言葉で話す不思議な人徳のある人で、知人からの信頼も厚く、「インテリアデザイナー近藤康夫」というブランドネームもあいまって、意外にあっさりと必要な資金は調達でき、2003年2月にAB designが設立されました。

written by yutaka

2. 俺、AB型なんだよね。

 設立時期の少し前に近藤康夫の本「AB DESIGN」が上梓されていましたので、社名もこれでいこうという事になりました。この本は近藤さんのインテリアデザインの手法が時系列を追って詳細に書かれているA面と、関わりの深い方達から見た「近藤康夫」像が書かれているB面の表裏どちらからでも読めるという力作で、アイスラボの重政さんの素晴らしい編集で単なるデザイナー本に堕する事なく、A面は秀逸でリアルなデザインの参考書、B面は読み物として面白い仕上がりとなっています。本の名前の由来は「デザインのA、Bまでは書いてありますが、C、D以降は自分で築き上げてください。」というのがオフィシャルな由来で、本の「はじまりのあとがき」に詳しく書かれていますが、近藤さん本人に聞くと「俺、AB型なんだよね。」とか、とぼけた答えしか返してくれません。
 青木淳さんと糸井重里さんの対談の中に、クライアントの要望の矛盾が見つかれば後はその解決を考えればよいから簡単だといったような事が書いてあるのですが、様々な状況下での相反する利害などの間でデザインという行為は重要な役割を果たすものなのかもしれません。AB型はA型とB型のもつ両面を使い分け、使いこなす二面性を持つなどと血液型占いではよくいうわけで、この「相反する二つの特性を合わせ持つ」という両義性や、相反する局面で必要とされる創造性に近藤さんは重きをおいているように思います。本の構成と同様に、家具ブランドとしての「AB design」はAライン、Bラインの二つの顔を持ってスタートしたわけですから。

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2006.09.14

3. ジャパンモダンの正統とは

 当初Aラインはジャパンモダンの正統をめざすスタンダードな木の家具、Bラインは近藤さんのコレクションラインで面白い素材や仕上げを使った新しい家具のデザインを提案し、他企業にたいして製品のデザイン自体も販売するというコンセプトでスタートしました。Bラインの家具はアルミの押し出し材を使ったテーブルやシェルフなどで「近藤さんのイメージ」に近いものだったのですが、Aラインの家具は非常にスタンダードな意匠で少し驚かされました。

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           ⓒ ナカサアンドパートナーズ
Bラインのアルミ押し出し材を使った家具。近藤さんっぽいイメージ?

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Aラインの家具。

 しかしこれこそが近藤さんの考えるジャパンモダンという事への答えだったのです。日本的でありかつモダンであるということへのアプローチとして日本の伝統美の中から直線構成とそれが織りなす陰影の美しさを抽出し、対抗軸としてミニマリズムを追求するイタリアンモダンの家具を置き、ジャパンモダンの家具としてミニマルでありながら、意図的に意匠の中に少しだけ直線を多く加えられた一連の家具をデザインしたという経緯を後に近藤さんからお聞きしました。勝手にイメージを持つということが間違っている訳で、近藤さんは粛々と確固としたジャパンモダンの家具を構築していたのです。

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L字の脚や、2枚合わせの天板が見えがかり上の直線を増やしています。

2006.09.17

4. モノではなくコトを売れ?

 先日AB designで行った「富山ガラス工房展」で知り合ったガラス作家の方と、モノ作りというのは残酷なものでそれを作る過程がいかに大変だったか、どれほど手間がかかっているかということは消費者にとってあまり関係がなく、でき上がったモノそのものとして評価されるという話をしました。ガラス製作は表現に制限が多く、なんでもないような事でも熟練の手技が必要だったり、ものすごく手間がかかったりするそうです。しかし、ひとたび百貨店の器のコーナーにおかれたら、他の量産品と価格や形状を比較されてしまう訳です。
 同じようなジレンマは家具にも存在していて、ひとたび世に出たらデザインの過程や製作の苦労などは判断基準のささやかな一助になるかもしれませんが、見た目と道具としての使い勝手と価格で大方は評価されていきます。近藤さんの家具デザインができあがり、製作して販売することとなり、2003年の冬には「AB design」の家具はモノとして市場に評価されることになったのです。

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ginsaro 和田 修次郎 作

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一輪挿し 金津 沙矢香 作

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水滴  坂田 裕昭 作

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perfume bottle yellow 高梨 良子 作

2006.09.18

5. デフレ、あるいは僕たちの失敗

 市場の評価はあまり芳しいものではありませんでした。価格が高いというのが大方のご意見でした。これには少し参りました。実は結構、近藤さんにクオリティを我慢してもらって安く作っていたつもりだったからです。「つもり」ではダメなわけです。原価を下げて安い家具を製作するのも、多分可能だったでしょう。製作しやすいコストがかからないようなデザインにしてくださいと近藤さんにお願いすることもできたでしょう。ただ、そんなことをするためにデザイナー主導型の家具ブランドを作ったわけではありません。
 2000年代の前半というのは、インテリア業界は転換期に入っていた時期です。バブルの崩壊で淘汰された家具工場がさらに中国へのシフトで調整を余儀なくされ、目に見える形でデフレが進行していた頃です。家具の単価水準は下がる一方で、あのカッシーナでさえ、東南アジアでのEbEwという安価な家具ブランドの生産をはじめた頃でした。安価な量産家具を作って売るのは大資本をもったメーカーならできたかもしれませんが、「AB design」がやれることでもやるべきことでもありませんでした。
 そこで近藤さんと相談して決めたのは「値段を少し上げて、品質を倍に上げること」でした。近藤さんの座右の銘は「分析と研究」です。家具ブランドを作る際も、色々な方に相談されて情報を収集していました。その頃はまだご存命だったカッシーナの前社長の武藤さんと近藤さんはビジネス上のつながりを超えて友人関係にあり、お互い遠慮しあいながらも助言を頂くこともあったようで、そのひとつが、「近藤君さあ、cassinaやarflexが出来ない事やらなきゃ駄目だよ。」だったそうです。「AB design」は2005年冬の新作から、高品質で孤高の「特殊家具屋」へと転換していくことになります。

written by yutaka

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                ⓒ 下村写真事務所
超高級家具材料ペアウッドを使った新作のアームチェアとテーブル

6. 特殊家具屋?

 「特殊家具屋」というのは現在の目黒通り沿いへ引っ越す前まで間借りさせてもらっていたEXIT METAL WORK SUPPLYの清水さんとよく話していた業態なんです。
 清水さんとは私が某家具屋に居た頃からのお付き合いで、年下なんですが、どう考えても私より15,6は精神年齢が上に思えるぐらいしっかりした人なんです。彼こそまさに特殊家具屋で、鉄工所の工場主なんだけど6mmtのオールステンレスの椅子やテーブルをデザインしてTIME&STYLEに卸していたりして、しかも、そのデザインたるやMOMA永久収蔵品レベルという玄人はだし(自分はデザイナーではないと言い張っているので)。それもそのはず、IDEEのワークステーションでマイケル ヤング・クリストフ ピエ・カリム ラシッドなどのプロト製作を恐ろしい過密スケジュールの中こなしていた人で、近年では有志と共に「現代手工業之党」を立ち上げたという、まあ変わった人ですね。
 小規模で家具を販売して生き残るためには、高品質なものを生み出す技術力と、特殊なニーズにこたえる創造力を兼ね備えた特殊家具屋である必要があると、常々話していたわけです。自分で製作するEXITさんのような特化の仕方をAB designが達成するためには、そして「品質を倍にする」事を可能にするためにはさらなる新しい出会いが必要でした。

written by yutaka

7. 忠蔵さん

 忠蔵さんの木工所に初めてお伺いしたのは2005年の夏でした。私は初めての場所に行く時は駅からの道をゆっくり歩いて覚えることにしていましたが、水路の多い湿地帯のせいか、開発が遅れていて雑草の生い茂る道を、ひどく暑い中30分ほど歩いたのを思い出します。
 工場の隣の自邸内の事務所に通されて、美しい無塗装の無垢の檜の大テーブルの前で、忠蔵さんにエービーデザインの現状をできるだけ客観的にご説明しました。他社を圧倒する品質が必要なこと、近藤さんの家具に対する考え方、自分の考える家具業界の現状などです。
 忠蔵さんは数多の当代一流と呼ばれる設計者と共に仕事をしてきた方なので、私の能書きをどう受け止められたのかはあまり想像したくありませんが、製作をお願いする家具の図面をおみせしたところ「素晴らしいデザインだ。」と気に入ってくださいました。
 もともと忠蔵さんは近藤さんの師である倉俣史朗さんと仕事をしたかったのだけれど、接点がなかなかできないまま倉俣さんがお亡くなりになり、近藤さんも間接的には知っていたのだけれども仕事をした事はなく、一度お手合わせを願いたいと思っておられたのだそうです。気難しそうな第一印象だったのですが、まるで布袋さんのように相好を崩して豪快に笑って「やりましょう。」と言ってもらえたのでした。

written by yutaka

8. メーカーの負うリスク

 忠蔵さんはリスクの高い先行投資の好きな人で、そういう意味ではAB designと付き合う事も先行投資の一つだったようです。昔は当たり前の事だったのでしょうが、木工所が直接問屋を介さずに材木を仕入れるのはあまり一般的でなく通常はホクサンさんなどから随時購入するものだというのが私の認識でしたが、忠蔵さんはブラジルやヨーロッパに直接材料を買い付けにいくアグレッシブな投資を行っています。凄まじいリスクだと思うのですが、一流を目指し特化したメーカーとなるためには不可欠なことなのでしょう。そういうわけで忠蔵さんのところには面白い材料がゴロゴロしていたのです。ABの新作の基本仕様となる3つの材料、ペアウッド、バーントオーク、チェスナットもその一部です。

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 ペアウッドはスイス原産の西洋梨で、緻密な肌理とペアのみが持つ女性的な優しい色合いが特徴です。ヨーロッパでは高級家具材料として珍重されているのですが、材料価格が非常に高いため日本では既製品家具に用いられる事は全んどありませんでした。

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 バーントオークというのは楢を特殊加工して、埋もれ木のように材木の芯まで黒っぽい色をつけたもので、日本で初めて忠蔵さんが仕入れた材木です。材木によって色の入り方が違い、その濃淡がウォールナットのような味わいがあり家具にすると今までにない美しさがあります。特に柾目に特徴的に現れる、通常は嫌われるところのトラ斑がつや消し塗装をすると見事な景色となりこれも味わい深いものです。

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 チェスナットは日本では古来から家具材料として使われていた栗の木なのですが、欧米ではB&Bが柾目をボードに横使いにしたり、最近では安藤忠雄さんの家具に使用されています。特に柾目には栓のようなすっきりした味があります。どれもあまり日本ではお目にかからない材料ですが、他社ができないことをやるという意味でも面白いラインナップになったと思います。

written by yutaka

2006.09.22

9.「厚突」とウレタン含浸塗装

 日本では無垢材の家具が高級品だという固定観念があるようです。接客していても突き板の使用はチープだとおっしゃる方がよくいらっしゃいます。しかし、本当にそうでしょうか?
 たしかに今の時代無垢材を使うのは贅沢の極みでしょう。LOHASという言葉がもてはやされていますが、これだけ人口が増えると無垢材の使用はサステイナブルな材料使用法とは言えません。とはいえ、私はエコの観点から無垢材使用を控えようと言う気は全くありません。突き板もいいものだと言いたいだけなのです。
 ABでも初期の段階では一部無垢材を使用していました。これを2005年の新作からは厚突きの突き板張りに仕様を変更しています。これは仕様を落としたわけではなく、ディテールを研ぎすますためでした。日本の通常の家庭内の環境は無垢材にとっては非常に厳しく、空調のオンオフで一日の温度、湿度の差が極端なことがままあります。無垢材はこのような環境の変化に応じ、収縮や反りをおこします。木材を使うかぎり避けられないことなのですが、より長期的に近藤さんの意匠のディテールを保つために仕様の変更は必要な事でした。
 厚突きの突き板というのは、欧米ではスタンダードなのですが、日本では薄突き(0.2mmt)が一般に流通している材料で、その約3倍の厚みの0.5-0.6mmにスライスされた材料のことです。厚突きの突き板は薄突きに比べ、塗装した際に無垢に近い深みがでます。ただ、厚い分無垢材と同様収縮や反りをおこすリスクもあります。
 ここで大事なのが下地処理で、ウレタン含浸塗装といって木の導管の中にウレタンが入り中で硬化する塗料で下地処理することで動き、狂いを防止します。またフラッシュ構造の木口面の芯材にはランバーを用いず、積層合板を用いる事で、木口面の木やせによる狂いを防ぎます。芯材にパーチクルボードなどを用いるメーカーも海外では一流どころでも意外に多いのですが、天板に傷がついて水が侵襲すると膨らんで突き板のハギ目がもりあがってしまうので、軽量化を考えても芯材にはペーパーハニカムが最適でしょう。こういった仕様であれば、無垢材にひけをとらない美しく長持ちする家具を作ることができます。
 このようにABの家具のようなミニマルな構成の家具ほど、素材や仕上げに気を配らなければなりません。見えがかり上、ミニマルっぽいものは割と安価に作れますが、ディテールが甘いとひどく安っぽくなってしまいます。突き板の吟味、仕上げへのこだわり、面取りや目地底の仕上げまで気を配らなければ、よくあるイタリアモダンのコピー品と同じになってしまいます。
 近年よく中国メーカーによる知的所有権の侵害への非難を耳にしますが、こと家具においては日本人による安易なコピーのほうが目立つように思います。今だにB&Bの完コピやってみたり、モラルのレベルは他国を批判するほど高くはないですね。ある大手家具販売店では国産OEMで月200台を超えると少し意匠を変えて中国生産に切り替えるそうです。そのため納入する家具工場側はあまり売れすぎないように工夫をこらすんだそうで、そんなことやってるうちに国内家具工場はどんどん倒産していくわけです。大手の家具店こそ国内家具メーカーと共に成長を目指すべきだと思うんですけどね。

written by yutaka
 

2006.09.24

10. シラタ付きのブビンガ

 忠蔵さんという強力な味方を得て、新作の開発は予想を超えて面白くなっていきました。木工所に現れた近藤さんは見事なシラタのついた大きなブビンガの原木に出会いました。ブビンガという木はアフリカ産で大きく成長するため、日本ではわりと一般的にカウンターや無垢の大テーブルなどの材料として使われます。オレンジがかった濃い赤みが特徴ですが、シラタと言われる白っぽい部分は通常は腐りやすいので切って落として流通しているそうです。そのブビンガはシラタがまるで日本刀のように褶曲しており、赤身の部分も美しい杢目がでているものでした。こうなると安価なブビンガも銘木としての付加価値をもつことになります。
 24azabu.netという西麻布に事務所を持つデザイナーのネットがあり、2005年11月に行われた代官山での展示会にAB designも参加することになっていたので、新作を展示会用スペシャルでこの木で作ることになったのです。この時に作ったA CH005ブビンガバージョンは強烈なインパクトがあり、後に伊勢丹さんでの展示で限定品として出品するや、いきなり初日で売れてしまいました。開店してすぐいらっしゃって、お買い上げいただいたお客様は洒脱なブルーの上着を着た年配の方で、新しく建て替えした家に置いて楽しまれるとのことでした。それは製作から販売に一貫して携わることの楽しみを味わえた瞬間でもありました。

written by yutaka

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2006.09.27

11. 裏テーマ

 この時の代官山での展示の際、床にパンチカーペットを切り張りしてモンドリアン風の模様にしました。なぜならこの時の裏テーマはデ・スティルだったのです。よく見ると確かにそういうモチーフがちりばめられているのですが、それが以前に書いたABのジャパンモダンのデザイン手法の延長線上で展開されているわけです。

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これはリートフェルトのred&blue

 このときに製作したA CH005のプロトにはじつのところ苦い思い出があります。忠蔵さんのところに検品にいった際、座面の下の反り止めが後脚の外ツラまで出ており図面と違っていたため、製作をとりしきっていた息子さんの忠勝さんに、これはなんですかと問いただしました。すると、デザイン上こうあるべきだと思うので、こうしてありますが今ならカットできますから判断してください、とおっしゃる。時間もさしせまっており自分で判断せざるを得なかった私は「保守的に」図面通りにしてもらったのです。後に近藤さんから図面の間違いを指摘されて、自分のセンスのなさにがっくりし、また忠勝さんたちの目の確かさに羨望を覚えたのでした。

written by yutaka

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苦い思ひ出

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これが正解

2006.09.30

12. デニムのソファ

 新作の中でも、製作が難しかったのがA SO003というデニムのソファです。以前からデニム生地でソファを張るというアイデアを近藤さんは持っていたのですが、色落ちの問題でなかなか製作に踏み切れなかったのです。代官山の展示の際はプロトということもあり、また直接体が接触する部分の多くを革で張って出展してみました。

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A SO 003 1P デニムと革のソファ

デニムと黒革というのはバッグに使われるような組み合わせで非常に面白いのですが、ソファの形状とあいまって2種の張り地を張り分けることが製作上の難点となっていました。張り地の合わせ目をきれいにあげるためと、張り替えを容易にするためには分解できるような構造にする必要があります。構造の強度を保ちながらノックダウン構造にすることが問題を複雑にしていました。
 解決法は非常にテクニカルなことでもあり、忠蔵さんのノウハウなので詳細を書くことは避けますが、伝統的なダボ・ほぞ組の仕口に特注金物を使い発展させた仕口で強度を保ちながら分解可能なものにする事ができました。
 椅子張りの須藤さんにも難しい仕事を短期間でこなしてもらいました。長い直線でステッチを縫わなければならず、さらに革を2方向から留めで縫製するなど、難度の高い仕事をこなしてもらいました。
 デニムの色落ち問題はデニムの風合いを愛する場合は色落ちを前提できちんとリスクをご説明して販売する他ないのですが、近い感じの生地をポリエステル/綿の混紡で作っていただきました。テキスタイルデザイナーの高橋正さんにお願いしたのですが、コンピュータジャガードという特殊な織機で織るのだそうです。このような様々な方の高度な技術、ノウハウに支えられて一つのデザインが具現化されていく過程に立ち会えるのはひどく贅沢なことだと思っています。

written by yutaka

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コンピュータジャガードによるフェイクデニム。化繊混紡なので少しテカリがありますが、色落ち感も表現されています。